文部科学省「大学入試のあり方に関する検討会議」(第4回)概要

小林委員(日本私立大学協会)
・日本の大学の約77%は私立大学、大学生の約75%が私立大学生。
・私立大学における入試の基本的な考え方は、建学の精神を源泉とする多様で特色ある教育実践の第一歩であること。

【「大学入学共通テスト」の利用に関する緊急アンケート実施の結果】
1. センター試験を利用する加盟私立大学は90%を超える。その利用方法の多くはセンター試験のみでの合否判定。
2. AOや推薦など多様な入試を行うためセンター試験利用入試による入学者のウェイトは低い。特色ある多様な入試を実施する中で、一般入試においても英語4技能評価を導入。
3. 一般入試における英語4技能の測定は民間の資格検定試験が中心(77.4%)多様な入試を展開するためセンター試験での入学者も少数であり共通テストに民間資格検定試験を活用する必要性を感じない。
4. 多くの私立大学でアドミッションポリシーに基づき一般入試においても学力の3要素の重要性に鑑みて、記述式問題が実施されている。
5. 既に一般入試に記述式問題を実施し、入学共通テスト活用試験での入学者も少数である私立大学で入学共通テストに記述式問題を出題する必要性を感じていない。
6. 共通テストで記述式を導入するのであれば、公平性・公正性の観点から大学入試センターでの採点が望ましい。
7. 安心して受験できる環境整備のため、大学入学共通テストでの協力を越えて、更なる協力を表明する大学が約半数。

【意見交換】
・私立大学では記述式を導入しているという話だが、選抜方法は様々であり推薦、一般入試等どういう記述式を活用しているのか。(益戸委員)
⇒AO等で課している。一般入試でもデータ解析する等の記述式を課している大学もある。(小林委員)

・何万人もの受験生がセンターの願書のみでマッチングしている状況でありアドミッションポリシーの観点から選抜しているといえるのか。また、記述式もセンター試験のみで実施してほしいということを望んでいる大学があるとのことだが新しい学力をどうやって測ろうと考えているのか。記述式問題を通してどういう人材が欲しいのか、大学自身で測るべき。(吉田委員)
⇒センター入試のみで合否判定を行っていると記載してあるが、センター入試を受けている受験生は通常一般入試を受けている。センター試験のみで入学している学生が多々いる、というのは正しくない。定員を割り込んでいる大学について門戸を開いていきたい。(小林委員)

センター試験のみで合否判定している大学は記述式を受験生に問うていない。(吉田委員)
⇒記述式をセンター試験で実施すれば問題ない。(小林委員)

・経済的な課題について申し上げたい。私立大学を受験する際、センター試験を受験する際に受験料がかかる。私立試験の受験、センター試験のみで合否判定、センター試験併用の個別試験それぞれのコストについて教えてほしい。(牧田委員)
⇒受験料収入は私立大学にとって重要。センター試験のみで合否判定する場合でもコストはかかっている。シミュレーションを積み重ねている。(小林委員)


宍戸委員(国立特別支援教育総合研究所)
・合理的配慮の提供:一人一人の申し出について、センターで確認し、合理的配慮の提供を実施
特別支援教育の視点から眺めた「高大接続」
1. 高校・高等部の多様な実態:「個に応じた指導」 合理的配慮の提供
2. 大学の多様な実態:「個に応じた学修」 合理的配慮の提供
・大学入試について
 多種多様な入学試験をすぐに整理できるか? ⇒段階的な取組
 英語の四技能(使える英語の獲得)、記述式問題(思考力等の育成)は、必要。
 ⇒共通テストで、すぐに行えるか?様々な試験に、どのように盛り込むか?
・英語民間試験活用の際には、合理的配慮の提供をどう考えるか?
・合理的配慮は、大学入学後の学修においてこそ、重要

【意見交換】
(末冨委員)センター試験だけでなく個別試験において障害を持った受験生に対する合理的配慮とはどの範囲なのか。多様性への対応や配慮についてはどうか。

(柴田委員)日本の学生の中での障害を持つ学生の割合は極めて低い。そもそも入学を志願する学生が少ないのではないか。センター試験受験の際、発達障害で配慮された方は少ない。大学に進学する段階でハードルがある。障害を持つお子さんのキャリアパスから考えていって大きな意味で入学を選ぶということを考える必要がある。


両角委員(東京大学
・専門家や現場の意見を軽視したことが問題。英語民間試験導入、記述式問題が大きな二つの目玉政策といわれるようになった議論の背景は依然としてよく理解できない。議論の論点が学力不問から、国公立の共通試験へ変化。なぜ、どのような経緯で、こうした転換が起きてきたのか、今後議論を進めていく上でも経緯を把握し共通理解を持ったうえで議論をしていく必要。
・「(これまでの)センター試験は教科学力を選別する機能を果たしている」はそれらを多く活用している国公立大学でむしろ評価が高く、国公立大学ではむしろ入試の負荷の大きさが最も大きな課題。入試の当事者である大学が入試に関わる課題をどのように認識し、どのように変革したいのか、ということを明確にした上で議論がなされる必要がある。
・大学が感じている負荷の問題は軽く考えてはいけない。その際に大学による多様さを無視することはできない。多様化した状況のなかでの共通テストの目的・意義は何かを再検討する必要。
・英語4技能や記述力を重視する動きは、教育現場で既に広がりつつあり、それらを支援することで、より多くの生徒・学生が利益を享受できる。
入試を変えなくても、大学教育は変わってきた。様々な取組みを行っている中で、取組みを向上させる支援をしたらどうか。
・「読む」「書く」「話す」「聞く」の能力は相互に関連しあった能力。習得には順序があるとの指摘もある。必要な英語能力も、どの分野でどのように活躍するかによっても異なっており、共通テストで一律に「4技能」を求めるのではなく大学によって重視する度合いも違っておりそれぞれの大学が個別に判断し、必要なものを活用すればよいのではないか。
・記述式についても英語4技能と同じで、それぞれの大学が判断してそれぞれが望ましいと考える形で導入すればよい。50万人を対象とした共通テストで記述式を導入することの限界は少しでも採点の経験があるのもであればすぐに気づく。

【意見交換】
・定員割れしている大学であっても、入学後の学生の能力を伸ばすことにより努力を向けることも大事であることには共感。数年来、高大接続改革の中で高校の教育は徐々に変わっていると聞いている。(島田委員)
進学校の方が影響を受けないのではないのか。入試のためではなく、すでに高校で取組みを行っているためリスニングの対策を特にしていない高校もある。(荒瀬委員)

文部科学省 初等中等教育局より「高等学校指導要領と英語資格・検定試験との関係について」説明があった後、質疑応答があった。

文部科学省説明概要】
英語の資格・検定試験と高等学校学習指導要領との整合性の確認について:
有識者及び文部科学省職員による確認:英語教育の専門家、高等学校英語教育の教育課程の基準の専門家、英語教育を所管する文部科学省職員が整合性があることを確認。
育成・評価する能力:英語 4技能を総合的に評価しようとする資格・検定試験と、育成・評価する能力の方向性は一致している。各資格・検定試験が掲げる目的は多様であるが学習指導要領が想定している言語の使用場面の範囲から外れるものではない。

【質疑応答】
(渡部委員)文科省から説明された内容は、高校現場での授業の改革・改善、卒業試験を作るという枠組みの中では理解できる。
大学入試と直接関係があるとは思えない。検証が不十分でないか。センター試験であれば2年間をかけて学習指導要領も含めて研究する。
一方、ケンブリッジ英検、IELTSなどは日本の学習指導要領を検証して作問しているとは思えない。日本の学習指導要領と全て合致して、それを測定するためにあるわけではない。点数で見えていないところもあり、CEFRのA2は「簡単で日常的な範囲なら身近で日常の事柄について単純で直接的な情報交換に応じることができる。」と定められている。しかし資格試験の中では、読んで読解を確認するということを測っている試験もありインタラクションを測っているわけではない。ケンブリッジ英検などは受検者同士のコミュニケーションを判定するようになっている。CEFRもほとんど意味がないと考える。リーディングとリスニングができて点数が高い人、スピーキングとライティングができて点数が高い人が同じになる。高校にも影響がある。しかし大学入試で活用することはおかしい。焦点を絞って議論をするべきである。

文部科学省)民間試験がベストだとは考えていない。ただ、学習指導要領との関係を考えると、現在の和訳だけや英訳だけの問題よりも有用ではないかと考えている。

(渡部委員)センター試験ではアクセントの問題が出題されていたが、発音のテストができないのでその代わりとして出題している。これは入試の限界であり、そこを配慮して出題している。350万人の人が英検を受検しているが日本人は英語ができないといわれている。英語能力を大学入試で判定することで改善すると考えているのか。

文部科学省)英語民間試験は様々あり、日本の大学入試に必要な力を設定している試験や世界で活用されているものなど様々あり、それぞれにメリット・デメリットが存在している。本来入試を受けるにしても受けないにしても、学習指導要領に沿った形で測定できることが重要であり、それをどのように測定するかは議論いただきたい。

(吉田委員)センター試験が学習指導要領に基づいているといわれていたが、では個別試験はどうなのか。大学によって異なるが学習指導要領から外れた内容を出題している大学もある。英語4技能を測る際にどの試験を受けるのかは学生によって変わってくる。海外大学を受験したい学生はTOEFL、IELTSを受ける。センター試験で英語4技能を測る場合、成績提供の問題もありスケジュール上不可能。その中で英語4技能を民間試験で測り入試で活用できないかということとなった。現在高校生はコミュニケーション能力の一つとして英語4技能を鍛えてきている。10年以上前から英語で授業を行う取組みもしている。ところが高校3年生で英語で授業をすることが減ってきている理由は2技能の試験が入試で問われるから。
高校で英語4技能教育をやったとしても、大学でどれほど英語4技能教育をしてもらえるのか疑問。

(末冨委員)検証を踏まえると、作業自体の課題が存在している。また、示されている課題が入試改革の中では改善できないものもある。パフォーマンス評価ができているかどうかは県教委の指導性も関わってくる。英語4技能の形成については本来、都道府県行政に主体性があるという理解なしで入試だけに責任を負わせるものではない。大学入試の不適切な出題について。日本大学では英語の学習指導要領を幾重にもチェックしている。そうではない大学も存在しているので、質が保証されているわけではないと個人的には考えている。そこは初等中等教育でフィードバックの仕組みを考える必要がある。また入試で英語のリーディングとライティングを問うことは各大学のアドミッションポリシーに基づいていることはもちろんだが、最新の研究状況は英語で発信されているのが一般的なため、それを踏まえてリーディングとライティングを重要視している。